富と幸せを生む知恵

書評

書籍の紹介

近代の日本経済を語るうえでかかせないのがこの本の著者「渋沢栄一」。

明治維新前後、さまざまな変化に遭遇して、政体の革新にもぶつかった。

乱世を生き抜いた「逆境の人」から学べる仕事論・人生論とはどのようなものか。

今一度、「日本の近代資本主義の父」が残した、素晴らしき人生の知恵を紐解いていきましょう。

(要約)15個の抜粋ポイント

 人は国家の為、社会の為にその力を尽くすべく生まれてきたのであるが、余裕があれば、家庭の為友人知人の為に尽くす、すなわち客観的見地に立って人生を過ごすことが人間としての本分である。

三井・三菱など日本でこそ大富豪だが、米国のカーネギーやロックフェラーに比べたら足元にも及ばない。いくら金を貯めて富豪になったところで世界の金を独り占めできるわけでもなし、それが社会万民の利益になるわけでもない。こんな無意味なことに貴重な一生を捧げるなど、ばかばかしいかぎりではないか。要するに「金はたくさん持つな、仕事は愉快にやれ」という主義なのである。

人間は努力すれば必ずその報酬は受けられる。あえて巨億の財産を遺さなくても、子孫には相応の学問を授け、その知能を啓発しておきさえすれば、彼らは自分自身で自らを養う力を身に付けるはずである。

「よく働きよく遊ぶ」ということわざの通り、働くときに十分精神を込めて働いたならば、遊ぶときにもまたこの疲労をいやすべく十分に遊べばよい。遊ぶ時に十分精神をこめて遊ばないような人は、働くときも十分精神が込められるものではない。

私は、自分で天の使命を受けている者であるという信念を抱いているから、どんな困難と闘ってもちっとも苦痛ではない。国家・公共のために尽くすのは自分の使命であると信じているから、自分の利益を犠牲にすることがあっても、不愉快を感じることはない。

近頃の人はともすると、すぐに悲観するし、またすぐに楽観したりする。悲観・楽観が一種の流行語のようになっているが、これは精神修養がおろそかなことを告白していて感心できない現象である。それゆえ私は、常に一方に偏らずに極端に走らず、その中間をとって程よくやっていきたいので、今まで悲観も楽観もしたことがない。

私が逆境に立ったとき、自分で実体験したことと道理から考えてみると、誰であれ「自然的逆境」に立った場合には、それを自己の運命であると覚悟することが唯一の策だと思う。「足るを知って分を守り」、これはどんなにあがいても天命だから仕方がない、とあきらめることができたら、どんなひどい逆境にあっても心は平静でいられる。

過失を責める場合、第一に心すべきことは、その人に対して少しでも憎しみの心を持っていてはならないということでもある。もしそういう気持ちで人を責めたら、せっかくの心尽くしも無になるだけでなく、反対にとんでもない恨みをのこすことになるかもしれない。

普段私は人にも物事にも精神を集中させて対応する。なぜならば人に接し、物事を処理した後、心中に一点のやましさもなくよい気分でいられたら悪いはずはない。私がよいと感じたことは、また他の人も必ずよいと感じると思う。

「人格」は人間にとって最も大切なものであり、個人の人格の完成がやがては社会の完成を意味する。それゆえ社会で生きていくためには、その完成に努力することは当然の責任であるといってよい。

成功ということを論じるならば、富を得るに至った方法、高い地位を得るに至った経路が、道理に欠けず正義を失わず、妥当な活動で勝ち得たものならば、それこそが真の成功だと私は思う。

 成功・不成功は必ずしも人間行為の「標準」ではない。人間として一時も忘れてはならないことは、行為の善悪なのだ。だから人道を踏み外して成功しても、それはまったく価値の低いもので、むしろ恥の種になろう。それゆえ私は、自分の成功、不成功よりも、道理に外れない行為をすることを大切に過ごしてきたのである。

世の中のことは「自然の成り行き」ということがある。言葉を換えれば「天命」というものだ。いかに人間が悶え騒いだところで、人間の力の及ばないところではどうすることもできない。だからいわゆる「人事を尽くして天命を待つ」であって、自分が尽くすだけ尽くしたら、それから先は天命に任せるより仕方がない。

読書する場合の心得は、何万冊の本を読破しても心に残らないような読み方なら、一冊の本を確実に記憶するものには及ばない。つまり読書の要は「心記」(心に刻み付けること)にあるのである。これは読書家にとってもっとも大切な言葉であろう。

書物は漠然と読み、散漫に終わらせてはならない。前もって狙いを絞って書物を選択し、効率的な読書法をすることが必要である。そのほか娯楽的な書物を読むこともまた必要で、文学書でもよいものであるならば、娯楽を得るとともに人間の品格を高め思想の浄化にも役立ってくれよう。

(実践)3個の行動ポイント

1.仕事を楽しむ工夫をし、正しい行いによって利益を得る。

2.人格を磨く努力を怠らない。

3.自分にとって有益な本を選び、自分に合った読書をする。

感想・まとめ

日本の社会はこれまで経験したことのないような変化がおとずれている。

悩み戸惑うなかで、歴史上の名実業家が残した知恵は、必ず有益なものとなるはずです。

どんなに時代が変わっても、天地間のことはすべて正当に行われているという。

「天道はいつも正義の味方である」という言葉に、とても勇気づけられる。

利益や成功だけを追い求めるのではなく、人間として美しく生きていきたいと強く思えました。

本日の書籍情報

【書籍名】富と幸せを生む知恵
【著者名】渋沢栄一
【出版社】実業之日本社
【出版日】2012-4-5
【オススメ度】★★★☆☆
【こんな時に】経済復興・社会事業・経営理念
【キーワード】仕事論・人生論
【頁 数】219
【目 次】

  • 第一章 堂々とした人生を歩む知恵
  • 第二章 真の幸せを引き寄せる知恵
  • 第三章 「論語」に学ぶ実業の知恵
  • 第四章 良い習慣を身に付ける知恵
  • 第五章 毎日を楽しく暮らす知恵
  • 読者へのメッセージ

渋沢栄一さん素敵な本をありがとうございます。

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