その悩み、哲学者がすでに答えを出しています

書評

書籍の紹介

仕事、健康、家庭、お金。

3000年も前から人類が今と同じような悩みを抱えていたという事実がある。

長い年月をかけて数多くの賢人がこれらを克服しようと考えてきたということでもあります。

もがき苦しんで答えを出そうとしてきたのが、哲学者や思想家と呼ばれる、思考そのものを生業とする人たちでした。

人生をかけて哲学者が導きだした考えに触れることで、私たちの日常の悩みを解決する糸口をみつけることができます。

今すでに悩んでいるあなた、この先あなたが出会う悩み、それらと向き合い乗り越えてゆくにあたって、この本で学んだ哲学は必ず生きてくるものです。

哲学に興味をもち、普段の思考の枠を広げてみましょう。

(要約)15個の抜粋ポイント

<将来食べていけるか不安 アリストテレスが答えを出しています>

将来の不安を解消するにあたって、綿密に立てた計画が絶対であるという保証はどこにもありません。ではどうすれば心配を払拭できるのでしょうか?それには「将来の目標や計画をいったん忘れ、今この瞬間のやりたいことや、やるべきことに熱中せよ」というのがアリストテレスです。結果はどうあれ、無欲にプロセスの作業を楽しむ。手抜きをせずに、一生懸命楽しみきるという人にこそ、高いパフォーマンスが生まれ、自然と結果がついてくるのです。良い結果とはプロセスを楽しんだおつりのようなものです。

<忙しい。時間がない アンリ・ベルクソンが答えを出しています。>

「忙しくて自分を見失っている」というのなら、何もしない、手帳に何も書かない1日をつくってみることです。ベルクソンが批判を投げかけるのは、「現代人が時間を空間的にとらえている」ということ。時間という目に見えないものを、目に見える空間的なたとえを用いて管理することで、私たちは自分に与えられた時間を無駄なく有効に使おうと考えます。他人との約束や世の中の慣習に流され、スケジュールを入れまくることで自分は充実していると勘違いし、そのことを反省することもなく生きている。本当に自由な時間とはごく主観的な時間のことであり、他人から言われた予定を詰め込むよりも、あとでふりかえると、ずっと生産的で、充実した時間だったりすることがあるのです。

<お金持ちになりたい マックス・ウェーバーが答えを出しています。>

お金持ちになるのは、金銭欲の強い、お金に執着のある人であるとはかぎらない。むしろ「お金という富への執着を捨て、ストイックに働いた人が結果としてお金持ちになった」とウェバーは言うのです。私たち人間を突き動かすエンジンがあるとしたら、それはお金そのものではないというのがポイントです。働くことへの情熱となる、あなたにとっての尽きせぬエネルギー源、否応なく仕事へとかりたてるものがどこにあるのか、胸の内を探ることからはじめてみるのが良いのではないでしょうか。

<やりたいことはあるが、行動に移す勇気がない。 ルネ・デカルトが答えを出しています。>

夢や目標を漠然と持っていても、行動に移せないまま、時間ばかりが過ぎていく。デカルトは「困難は分割せよ」といいます。目標までの道のりが果てしないものに感じられるなら、その大きな目標を小分けにして、途中で達成すべきいくつかのサブゴールを立て、そのサブゴール一つ一つを確実にクリアする。その繰り返しが達成感という快楽となって、無我夢中にクリアし続けたら、いつのまにか途方もないところまで来ていた、という考え方です。本気で取り組める小さなゴールを刻んでいったら、夢は夢でなくなります。

<緊張してしまう ゴータマ・シッダールタ(ブッダ)が答えをだしています。>

3日後にせまった大きなプレゼン。「うまくやらなければいけない」「はずしたら人生が終わる」ここぞという大事な場面で緊張してしまう悩みに対して有効なのはブッダの教えです。仏教では世界が無常であるという考えから、あらゆることが寄り集まっては流れ去る現象であると気づく。過去の記憶にも未来への不安にもこだわりを持たず、「今・ここ」に集中することで、煩悩から起こる執着のとめどない膨張をせき止めることができるのです。緊張感を暖和する方法として瞑想をすすめています。ジムでからだを鍛えるように、瞑想で心を鍛えることも可能であることが、脳科学の見地からも証明されています。

<思い出したくない過去をフラッシュバックする フリードリヒ・ニーチェが答えを出しています。>

人生に失敗はつきものです。幸せで楽しい体験も、思い出したくもない失敗の体験も、同じように因縁でつなぎ合わされて、めぐりめぐっているのです。不幸な体験がなければ、いい思い出もないわけで、両方があるから人生はつらく、そして楽しい。その振れ幅の大きい人生をこそ愛し、楽しめ!と言っています。

<自分を他人と比べて落ち込んでしまう ミハイ・チクセントミハイが答えを出しています。>

実力主義の価値観が混ざりながら、ステイタスの価値観がいまだ根強いニッポン社会。例えば純粋に実力が支配するものづくりのプロセスでは、他人との比較で優越感や劣等感を感じることなどは無意味で、きた依頼に自分の持てる限りの力を出し切れるかがすべてになります。つい他人と自分を比べてしまい、他人に劣っていることが気になるのであれば、「フロー体験」を求め、他人や自分の存在さえも忘れる課題に取り組む。そういう機会を積極的に求めるのがよいのではないでしょうか。

<他人から認められたい。ちやほやされたい。 ジャック・ラカンが答えを出しています。>

ネット社会ではSNSで、「認められたい」という欲求が刹那的に満たされても、、すぐさま欠乏に悩むという悪循環に陥りがちです。ラカンは「大文字の他者」に認められないことには、人は真に承認欲求を満たすことができない」と言っています。「大文字の他者」とは抽象的な他者、つまり、「神様」や「大義」などです。自分の中に内面化した「ことそのもの」をめざし、トライ&エラーを繰り返しながら熱中し、見事やり遂げた時、あとから勝手に他人の承認はついてくるのです。

<常に漠然とした不安に襲われている トマス・ホッブズが答えを出しています。>

現代人の多くが、頭のどこかで絶えず仕事のことや人間関係で不安を抱えている。ところが、人間とは本来そういうものだと、ホッブズは言います。人間の感情において最も根源的なのは恐怖であり不安であると。成功に浮かれていたら失脚してしまう。前後左右を点検するような恐怖の力は生きながらえる上で必要不可欠であり、デフォルト(標準状態)であると腹をくくる必要があるでしょう。

<友人から下に見られている アルフレッド・アドラーが答えを出しています。>

結論からいえば、「下に見られたくない」と願うのは自分の課題かもしれませんが、「わたしのことを下に見てくるかどうか」は他者の課題だ、ということです。これがアドラーの心理学、「課題の分離」です。あなたはあなたの課題を生きればよいのであって、他人の課題を引き受ける必要はない。あなたは誰の人生でもなく、あなた自身の人生を生きればよいのです。

<嫌いな上司がいる。上司とうまくいっていない バールーフ・デスピノザが答えを出しています。>

私たちは嫌味をいう上司に対して、つい、なぜもっとマシな言い方ができないのだろう?と考えてしまうわけですが、スピノザはその上司を含めて、だれも、「自分で自分を変えることはできない」と言っています。すべては彼を生んだ家族や育った環境や背景や入社後の経歴その他、彼と彼を取り巻く世界によって決まっているのだというのです。「理解」することであなた自身が、魂の平安を得られるということです。

<大切な人を失った ジークムント・フロイトが答えを出しています。>

大切な人を失ったとき、人はただぼう然と立ち尽くし、悲しみに暮れるしかないのでしょうか?そうではない、「悲しみとは力である」というのがオーストラリアの精神科医、ジークント・フロイトです。大切な相手を喪失した人間は、失われた対象と一緒にいたいと、一度は底なしの悲しみに沈むのですが、時間がたつにつれて「でも私は生きていかなきゃ」と、やがて冷静さを取り戻す。こうなるのには時間のかかる、長い道のりです。目の前の悲しみから目をそらさず、深く嘆き悲しむことこそ、大事なものを失った人ができる大切なこと。悲しみつくすことそのものに、癒す力があるのです。

<やりたいことがない。毎日が楽しくない。 道元が答えを出しています。>

「なんでもないその日常にこそ、人生の「悟り」を得る機会がひそんでいる。日本曹洞宗の宗祖にして日本を代表する宗教哲学者・道元はそう言っています。会社や家の中の「雑事」も「動く座禅」ととらえ、目的を持たず、無心に、一意専心に打ちこむこと。そうすることで自意識が小さくなる効果があります。そして、あなたの心の中に仏が住まうことを知るはずです。ささやかなことと思うかもしれませんが、そんなことで人は生きることの喜びを実感できたりするのです。

<死ぬのが怖い ソクラテスが答えを出しています。>

大切なことは、ただ生きることではなく、よく生きることである。よく生きるとは、死を終わりとする肉体的な生の長さにこだわらない生き方。「魂」が劣悪なままでは、いつまでたっても満たされないのです。死ぬのが怖いとすれば、その生が「ただ生きる」という肉体的次元にとどまっているからでしょう。「魂」をすぐれたものにしようと努力しましょう。哲学とは「死の練習」である。知を愛し求める欲求さえあれば、死ぬことも怖くなくなる

<人生がつらい マルティン・ハイデガーが答えを出しています。>

生活が苦しい、家族や身近な人間関係もこじれ、悪化してしまった。気力、体力も、もうない。悩みが重なり、肉体的にも精神的にも追いつめられ、もう死ぬしかないと思ったとき。20世紀を代表するドイツの哲学者マルティン・ハイデガーならばこう言います。「本気で死を意識したということは、ほんとうの自己の生に目覚めたということである」と。ひとは死を本気で決意したときこそ、根源的な時間である人生の残り時間を生きはじめるのです。これからどれだけ苦しい後始末が待っていようとも、あなたはいま真に自分の人生を生きる、その最初の日にたっているのだ、と考えることができるのではないでしょうか。

(実践)3個の行動ポイント

1.大きな目標はステップを小分けにし、一つずつクリアしていく。

2.人間関係において、他人の課題に踏み込まない。自分の課題に踏み込ませない。

3.瞑想を習慣にして、心を鍛える。

感想・まとめ

この本で紹介されている悩みは、誰しもが人生で経験することです。

日常で感じるささいな悩みや、人生が大きく変化するような出来事。

哲学から学んだ思考が役に立つのではないでしょうか。

私自身、慌ただしく過ぎる日常にどうすれば解放されるのか、悩んでいました。

必要以上にやるべきことを予定に入れ込み、時間を浪費してしまっていた。

意識的に何もしない時間を確保する必要があると感じました。

人間関係においても、他人の課題なのか、自分の課題なのか、あいまいな感覚でしかありませんでした。ここをはっきりとさせるだけで、気持ちが楽になるはずです。

人生のあらゆる場面で、哲学者たちの英知を活用していきたい所存です。

本日の書籍情報

【書籍名】 その悩み、哲学者がすでに答えを出しています。
【著者名】小林昌平
【出版社】文響社
【出版日】2018/5/2
【オススメ度】★★★★☆
【こんな時に】悩みがある。哲学を学ぶ。
【キーワード】哲学、悩み、答え
【頁 数】278ページ
【目 次】

  • はじめに
  • 仕事
  • 自意識・劣等感
  • 人間関係
  • 恋愛・結婚
  • 人生
  • 死・病気
  • おわりに
  • 参考文献

小林昌平さん、素敵な本をありがとうございます。

コメント